いとしいあなたに幸福を
「それって、もしかしたら双子の御子が生まれるとかそういう明示なんですかね?」

「いや…双子では、ないみたいなんだ。それに……」

「周様?」

口籠る周に、陽司は不思議そうに声を掛けた。

「都は、今回の出産すら危ないかも知れない」

「え…」

「元々肺が弱いんだ、持病の影響は想定してたさ。だけどそうじゃない…妊娠して発覚したんだが、そもそも都の身体は子供を宿すには不向きなんだそうだ」

動揺を見せる陽司に対し、周は淡々と言葉を続けた。

「…俺は、都に無理をさせてまで子供を生ませたくない。でも母は違う。そもそも俺に結婚を強いた理由を考えると、母は都に子供を生ませるだろう。都自身も、生みたいと言ってるしな」

「周様…」

「都は解ってるんだ、母が自分に何を求めてるのか。もしも自分が俺の子供を生めなかったら、母が俺に他の令嬢との再婚を勧めるかも知れないとも思ってる」

「そんな、いくら厘様でも流石にそんなこと…」

「まあ状況的に無理だろうな。そうなると残る手段は、授かった子を諦めての代理出産か」

「代理出産、って…」

母なら考え兼ねないと思い当たったのか、陽司は苦々しげな表情で口籠った。

「しかも占部家との手前、表向きには都が生んだことにしなけりゃならない。…都は勿論、俺だってんなことは絶対にしたくないよ。だから都は、たとえ何があっても今回の出産を諦めない」

折角授かった妻との子供を殺して、跡継ぎを産ませるためだけに好きでもない他の女を抱く――そんなことは絶対にしたくない。

もっと都の身体も心も、気遣ってやりたいのに。
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