いとしいあなたに幸福を
「…そうなんですか?」

「そうよお。女の子は男の子と違って複雑なのよ」

年頃の女の子。

そういうものなのだろうか。

確かに、愛梨がいつの間に周のことを好きになっていたのか、全く気が付かなかったが。

「じゃあ、どうしたら機嫌を直してくれるんですかね?」

「そうねぇ、例えば愛ちゃんって何が好きなの?」

「はい?」

「何か好きなものを贈ってあげたら、愛ちゃんも喜んでくれるんじゃないかしら。そしたら許して貰えるかもね」

愛梨の好きなもの…?

周――は無理だとして。

そういえば愛梨は元々無欲な子で、あまり物を欲しがったりしたことがなかった。

家族四人で暮らしていた頃から、そうだった。

あまり裕福ではない家庭だったせいか、遠慮がちで我儘も言わないし好き嫌いもしない。

今まで聞き分けが良過ぎて、だからこういうときにどうしてやればいいのか解らないのだ。

「確か…前に果物が乗った生菓子を貰ったとき、桃の乗ってるやつが気に入ってたみたいだけど…」

「ま、甘いものを嫌いな女の子はいないから定番でしょうけどね」

「はあ」
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