いとしいあなたに幸福を
定番だとか、複雑だとか。

確かに女の子は単純なのかそうでないのか、良く解らない。

「…何となくだけど、解りました。取り敢えず今度愛梨が喜びそうなもの、街で探してみますね」

「そうね、それがいいわ。何なら私も一緒に行ってあげてもいいわよ?」

「いや、自力で何とかしてみます」

「あ、そう…」

目の前の彼女が残念そうに肩を落としたのだが、何故だろう。



――それから街に繰り出した悠梨は、何件か菓子店を巡って愛梨の好みそうな菓子を探してみた。

悠梨自身は余り甘いものが好きではないので、店に充満する菓子の甘い匂いに噎せ返りそうではあったが。

何件目かで、愛梨が以前喜んでいた白桃を使った菓子を見付けて無事購入してみたはいいものの――あとはこれをどう渡すか、である。



「よお悠梨。珍しいな、街で買い物か?」

邸に戻った瞬間、玄関の広間で周と顔を合わせた。

「あ…ああ。愛梨にな、ちょっとやるものがあって。周こそ珍しく暇そうだな」

妊娠が発覚してから、都は体調を崩すことが前にも増して多くなったと聞いた。

そのため、周も極力都の傍にいることが多くなった筈だが。

「ん。今ちょうど検診中でな、医者に部屋を追ん出されちまった」
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