この束縛野郎が!!
見つかってしまったものは仕方ない。
これ以上悪あがきをすると、もっと酷くなることを私は知っている。
一つため息を吐いて気合を入れると、
私はそこに立って私を見る彼に構わず、
靴を脱いで下駄箱の中にしまい、上靴を出して履く。
「昨日、メールしたんだけど」
「メール打つの凄く遅いんだ」
「電話もしたんだけど」
「私昨日帰って直ぐからさっきまで寝てたんだ」
「寝てたって男とじゃないよね?」
「んな訳ないじゃん。男関係片っ端から邪魔してるのどこの誰だよ」
「当たり前じゃん。雪乃に男が話しかける事すら嫌なのに。
もし何かあったら俺、雪乃めちゃくちゃにして監禁しちゃうもん」
この良くない方に話を進めている異常な男子…桐谷 奏多(きりたに かなた)は、同じ高校一年だがクラスの違う男子だ。
中学の出身も違い、委員会等何も接点の無いはずの桐谷と私は、
本来なら見知りの仲でも、名前を知っている仲でもないはずなのだが、
この男は何かに付けて、私の近くへ来ては面倒くさい事ばかり言う。
「ちゃんとメール返してよね、心配するから」
「………」
そう忠告する桐谷だが………一つ…いや言える限り言っておく。
私とこいつは付き合っていない。
友達ですらない。
『心配するから』と言うのは、
私の心配を純粋にしている訳では無い。
私が他の男と接触してないかを心配しているのだ。
自分以外の男が私に寄るのを嫌がり、
私の全てを束縛したがるこいつ。
何故こんな事になったのか………
それはさかのぼる事3か月程前。
暑い暑い夏休みだった……