【短編集】あいとしあわせを祈るうた
そして、二頭身の、一抱えもあるおとぼけ顏のぬいぐるみを指差した。
「これ、ゲットしますよ。
俺、大学時代、UFOキャッチャー研究会に入ってたんです。
これは5回でイケます」
そういいながら、アームとぬいぐるみの位置を丹念に確認する。
一回目は、アームの強さを見るんだそうだ。
「これが異常に弱かったら絶対無理。
店側に取らせる気がないってことです…
あ、まあまあかな…
クマが座ってる台座が小さいんで、何度か揺さぶる感じで、転げ落ちてくれるかな…」
私に説明してくれているようで、
実は自分に言い聞かせている。
私は、アームじゃなくて、杉本君の横顔をじっと見る。
一重瞼の細い目。
鼻も口も小さい。
イケメンとは言い難いけれど、清潔感のある好青年。
エッチは好きなのかな…?とか
つい不埒な事を考えてしまう私。
結局、5回挑戦しても、クマは取れなかった。
「はあ…ダメだあ…」
「世の中、そんな甘くはないのよ〜
ちょっと喉乾かない?」
肩を落とす杉本君を私は、
ドリンク・コーナーへ誘った。