【短編集】あいとしあわせを祈るうた


「あ、小銭ないや。
俺、両替してきます」


「あ、いいって。私、出すよ。
杉本君何にする?冷たいの?温かいの?」


「いや、崩してきます!」


杉本君、走ってゲーム・コーナーの方へ戻っていった。



ベンチで1人待つこと5分。

なかなか戻ってこない。


両替ついでにトイレにでも行ったのかな…?と思う。


スマホを取り出し、ツイッターをチェック。

冬馬は何も呟いていなかった。


今頃、馬鹿騒ぎしているんだろうな…



[お疲れ様!飲み過ぎるなよ (-。-;]


釘さしメールを打ち、送信したところで、私の視界に茶色が飛び込んできた。



「わあ!」


驚いて顔を上げた私の目の前には、さっき諦めたクマのぬいぐるみが現れた。


ルン!ルン!って、クマが言っているみたいにゆらゆらさせながら、満面の笑みを浮かべる杉本君。


「いやあ。
UFOキャッチャー研究会元会長としてあの結果はどうも悔しくって…
もう一回だけってやってみたら取れたんです!お待たせしてすみません!」


クマのぬいぐるみは、ぽんと私の膝に置かれた。


「…何?くれるの?」


こんなの持って歩くのハズカシイんだけど。






< 16 / 70 >

この作品をシェア

pagetop