【短編集】あいとしあわせを祈るうた
「あ、小銭ないや。
俺、両替してきます」
「あ、いいって。私、出すよ。
杉本君何にする?冷たいの?温かいの?」
「いや、崩してきます!」
杉本君、走ってゲーム・コーナーの方へ戻っていった。
ベンチで1人待つこと5分。
なかなか戻ってこない。
両替ついでにトイレにでも行ったのかな…?と思う。
スマホを取り出し、ツイッターをチェック。
冬馬は何も呟いていなかった。
今頃、馬鹿騒ぎしているんだろうな…
[お疲れ様!飲み過ぎるなよ (-。-;]
釘さしメールを打ち、送信したところで、私の視界に茶色が飛び込んできた。
「わあ!」
驚いて顔を上げた私の目の前には、さっき諦めたクマのぬいぐるみが現れた。
ルン!ルン!って、クマが言っているみたいにゆらゆらさせながら、満面の笑みを浮かべる杉本君。
「いやあ。
UFOキャッチャー研究会元会長としてあの結果はどうも悔しくって…
もう一回だけってやってみたら取れたんです!お待たせしてすみません!」
クマのぬいぐるみは、ぽんと私の膝に置かれた。
「…何?くれるの?」
こんなの持って歩くのハズカシイんだけど。