【短編集】あいとしあわせを祈るうた
「はい!クリスマス・プレゼントです!」
胸を張る杉本君に、押し返すわけにはいかない。
「すご〜い!ありがとう!」
私は笑顔でクマを抱き締めてみせた。
うう…高校生カップルみたい。
クマの柔らかな生地の感触が手に馴染む。
ふんわりと抱き心地がとても良かった。
段々嬉しくなってくる。
杉本君、私にいいとこ見せたかったんだね。
「ねえ」
ホットコーヒーを啜りながら、私は人一人分空けて隣に座る杉本君に訊く。
「さっきの質問だけどさ、
もう一回訊いてもいい?」
「…何でしたっけ?」
ペットボトルのコーラを唇にあてがいながら、首を傾げる。
「なんで、彼女と別れたの?」
「ああ…」
杉本君は遠くを見る。
「大学生の時から付き合ってたんですけどね……好きな人が出来たんです」
「ああ、彼女に」
「違います。俺にです」
「えっ!意外!杉本君、浮気なんかしそうにないのに!」
私がオーバーに声を張り上げると、
杉本君は顔を赤らめた。
「浮気なんてしてないですよ。
俺が一方的に想ってるだけです。
それだけでも、彼女、あ、元彼女には悪いじゃないですか。
だから、可哀想だったけど、もう付き合うことが出来ないって言いました」