【短編集】あいとしあわせを祈るうた
「なっ、お前…なに考えてんだよ!馬鹿にしてんのか?俺がそういう目的だって決めつけんじゃねえよ!」
「ひっ…」
ナカジ君の剣幕にわたしは、ベッドから立ち上がった。
わたしの白いフリルのブラウスの前は、半分まで開いていて、水玉のブラと肌が見えている。
「だって…親の留守に俺の部屋に遊びにこいっていうの、こういうのがやりたいからでしょ?」
わたしはムキになって反論した。セリフはすごいけど、声が震えてしまうのは、背伸びしてオトナっぽい娘を演じているから。
同期で設計課の中嶋英人(通称ナカジ)は、昔ちょっとワルかったのかな?って感じだけど、目が優しい人。
背も高くて、仕事の飲み込みもメチャ早いキレ者、今年入社した中では3本の指に入る目立つ存在。
5月末にあった同期の飲み会の後、2人きりになったところでわたしから告ったら、両思いになれた。もうこのまま死んでもイイ!っていうくらい嬉しかった。
でも…ナカジ君に比べて平凡な女の子のわたしは、いつもどこか不安。
ナカジ君がわたしに飽きて、違う娘を好きになったりして…とか。
例えば、受付にいる色っぽい鈴木さんとか。
社内恋愛だけど、あんまり隠してない。未だに学生気分が抜けてないねって、たまに周りの人達に言われちゃうけど。
お互い、まだ研修期間で残業はほとんどないから、なるべく退社時間を合わせて一緒に帰る。人目がない路地では、手を繋いだりする。
すごく幸せ。
この日は、ファミレスでご飯食べたあと、最寄り駅でバイバイする直前に言ったんだ。