【短編集】あいとしあわせを祈るうた
ナカジ君はモテる。
多分、キスとかしたことあると思う。
ハタチにもなって、キス経験がないわたしがヘタなキスをしたところで、ナカジ君の心を鷲掴みには出来ない…
何故、わたしがこんなことを考えたのか。一言で言うと、パニクってたんだと思う。
いつのまにか、無意識のうちにブラウスのボタンを外していたんだ…
本当に馬鹿。
そして、結果的に…ナカジ君を激怒させてしまった。
「そんなに怒ることないじゃん!なら、わたし帰る」
「待てよ、せっかく来たんだから帰るなよ!」
ナカジ君はわたしの腕を引っ張り、壁際に追い詰めた。わたしの逃げ場はない。
ドンと大きな音がして、ナカジ君の両腕がわたしを包囲した。
ナカジ君の茶色っぽい目はすごく綺麗。
それなのに、顔が近過ぎて怖い。
整った眉毛の形が少し歪んでる。
なんでこんなに怒らせちゃったんだろ…
「わたし…確かにやり過ぎたのは反省するけど…気分悪くさせてごめん」
我慢出来ずに涙がポロポロ出てきちゃう。
根は真面目なひとだから。
きっとスレた女が許せないんだろうね…
こんなことしちゃって、わたし馬鹿だな…