【短編集】あいとしあわせを祈るうた



……はあっ!?



衝撃の発言に、私の箸から豚トロがポトリ。

ちょうど、下にあった小皿に落下し、タレが飛び散った。

でも、セーフ。
白いチュニックには被害なし。


「…なぜ、そう思ったの?」


私は冷静を装い、訊いたあと、
グラスの烏龍茶を一口啜る。

これは爆弾だよ。答えによっちゃ、私、箸投げて帰るから!



「上手だから……
さりげなく、リードしてくれるし、痒いところに手が届く感じ、すげえって思ったから。
そういう風に感じたの初めてだった」


慎也は、ちょっと照れ臭そうに上目遣いをした。


そのいたずらが見つかった小さな男の子みたいな目を見た瞬間、私は完全にノックアウトされてしまった。


もおお〜っ
…可愛過ぎるって~!


「…慎也!肉、食べよう!」


私は、カルビ、上ロース、ミノを次々に網の上に置いた。


肉が、じゅう、と音を立てて焼けていく。


「私、焼肉の匂い嗅くと、この後、セックスするぞ~って胸がワクワクしちゃうんだよね!」


「そうなの?香代子、変わってんなあ」


…慎也は、覚えていなかった。




【END】




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