【短編集】あいとしあわせを祈るうた
うちの会社には嫌な女がいる。
私が都心にオフィスのある塗料メーカーで働き始めたのは、半年前からのこと。
前の会社が倒産するという浮き目に遭遇、10社以上履歴書出しては撃沈し、奇跡のように合格した職場だった。
そこにいたのが勤続10年の加賀先輩。
塩見さん、分からないことがあったらなんでもきいてね?
初対面のとき、向かいのデスクに座る加賀はにっこりと笑って言った。
綺麗系の人。
優しげな笑顔で、男兄弟しかいない私は、こんな人がお姉さんだったらいいのにって思った。
仕事は思った以上にやり甲斐があった。全国各地にある営業所や工場の在庫管理を任された私は、毎日、電話やパソコンを駆使する忙しい日々となった。
でも、私がオフィスの雰囲気に馴染み、上司の信頼を得るにつれて、加賀の私に対する態度が素っ気なくなってきた。
ひと月前。加賀がこなせなくて、私に回ってきた仕事があった。加賀の指示がいい加減で、結局課長からやり直しを命ぜられた。
加賀は約束があるからと逃げて、私は金曜日の夜に1人残業する羽目になった。夜9時くらいまでかかったけれど、どうせ私にはなんの予定もなかったから加賀を恨んだりはしなかった。