【短編集】あいとしあわせを祈るうた
29年の人生の中で印象に残る夜景って、いくつかある。
たまには過去を振り返ってみよう。
高校三年の時、社会人カレにドライブで連れていかれた湘南台の夜景。
大人になってからは、リッチな10歳年上の彼と行った香港の100ドルの夜景。
(天気はイマイチだったけど…)
函館や札幌・藻岩山の夜景も綺麗だったなあ。灯りは少なめだけれど、きりりと澄んだ空気のせいか輝きがブリリアントなのだ。
でも…湘南台も香港も北国の夜景も、それぞれ別な彼だけど、ぶっちゃけ、もう名前はっきりと思い出せない。顔は覚えてるんだけど。
確か…湘南台はバイク乗りのヤマダで、香港は不動産屋のチバ。藻岩山はスキーの帰りだったな。あいつあいつ…タケヤマ?だっけか?函館は…んー?
と、こんな有り様になるのは私が少々【ビッチ】だから。
人にビッチと言われたらムカつくけど、まあ言われても仕方ないかな。気にしないよ。
高校2年で色恋に目覚めてから、私には常に、といっていいほど彼氏がいた。
好みだな、付き合いたいな、と思った男に『遊びに行かない?』って直球で誘うのが私のやり方。たいていの男がOKしてくれた。
付き合って冷めてきた頃に、次の彼氏候補となる男が現れる。
今彼とすんなり別れるテクニックもいつの間にか身に付けていた。(粘着質な人は選ばなかったし)
だいたい一年ごとに彼氏を変えていた。
でも決して私は魔性の女、危険人物じゃないと一言添えておこう。
兄、双子の弟という家庭環境で育ったせいか男と話す方が気楽ってだけ。女の子は裏表ある感じがちょっと苦手。
だから女友達がとても少ない。
おかげで【友達の彼氏を奪う】という人として最低なことをしでかさずに済んだ。
それだけはしちゃいけないよね。うん。
絶対に!因果応報ってあるからね。
そんな私も気付いたら…あら、もうすぐ30歳。
気付いたら、もうすぐクリスマス。
アラサーの中心に近づくにつれて、年々痩せにくくなるのと同じに、恋の相手も見つかりにくくなっていたのに気付いた。
久しぶりにひとりも気楽でいいか、なんて思っていたら、なんと…
いつのまにか、奥さんのいる人を好きになりかけていたの。