【短編集】あいとしあわせを祈るうた
「年末とお正月の予定は?
どっか行くの?」


目の前にいる好ましい25歳の男に興味が湧いて、私はそんな質問をしてみた。



「年末年始は山梨で山籠もりします」


杉本君はきっぱりと答えた。


「山籠もり?登山するんだ」

もぐもぐとニンニクの芽を咀嚼する私。
この臭いも杉本君なら寛大に受け止めてくれそう。


「いや。工房です。木工房」

「モッコウボウ?」

「はい。空き家を改築して、旋盤やらチェーンソーなんか置いてあるんです。
そこを5日間くらい借りて椅子を作ろうと思ってるんです。
祖母が腰が悪くて、座り心地のいい椅子を欲しがってるんで、プレゼントしようと思って」

「…旋盤?椅子?」

「旋盤は木材をクルクル回して加工する機械のことです。木工旋盤。
椅子は人が座るやつですね…って、あ、これは分かりますよね、すみません」


ぺこりと頭を下げる。


その仕草がカワイクて、私が思わず笑い声を立てると、杉本君は嬉しそうな笑顔を見せた。








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