candle
「あの…。」
思わず郵便屋サンを呼び止めた。

心臓がバクバクするって
このことなのかもしれない。

郵便屋サンが私を見ていた。
呼び止めてしまったのは私で
当たり前のコトなんだけれど。

「あの…私…亜貴と言います。
…郵便屋サンの…お名前…」
「大輔です。」

お伺いしてもいいですか?の
セリフが言えないまま
今までで一番、少し大きな声で
はっきり言ってくれた。

「…大輔と言います。」
胸がキュンと音を立てたのが
聞こえてしまってるかも。

「大輔サン…。」
…この小さな声、届いたのかな。

緊張してうまく笑えなくても
笑顔を作って…目線を下げた。

目線を上げた時には、
まだ私を見てくれていた。

そして、静かに、視線が離れて…
郵便屋サン…大輔サンは
エレベーターの中に入っていった。
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