押し殺す【短篇】
「おい、奴の最期の表情を見たか?」

王が、近くの者に尋ねる。

「はい、見ました」

「無表情だったな。せっかく、怯える様子を楽しみにしておったのに。けしからん、けしからん」

「そうですね。怯える表情だけが、唯一の楽しみですからね」

その場の者は皆、不完全燃焼、といった表情を浮かべていた。

< 28 / 30 >

この作品をシェア

pagetop