カラッポの君-恋計画-


「……っ!!」


パリーンッ


どうしても。

どうしても俺は動けなかった。

チャンスだったのに。

目の前で怯える女が、これ以上ないほどに美しかったから。

少しの迷い、瞬間聞こえた、ガラスの割れる音。


逃げてどうする。


「……くそっ」


ガチャッ―


「おや。失敗か?」

ドアを開けるとテツが笑って言った。

「うっせー」

「復讐なんて古いよ?」


分かってる。

そんなこと――



< 6 / 175 >

この作品をシェア

pagetop