カラッポの君-恋計画-
「アユム。いいのよ、これは割れても」
「なんで?それは――」
「いいのよ」
ママが粉々になったガラス細工を見ていた。
毎年職人さんに作ってもらう美しい置物は、16個目だ。
あたしが生まれた年からずっと続いている。
パパが警官の人生でたった一度だけ、殺めてしまった人への贈り物だと、中学に上がった頃聞かされた。
お墓にそれを置いて手を合わすパパは、凛としていた。
きっと何かとても深い意味があるんだと、そう思っていた。