カラッポの君-恋計画-

ポツポツ、と顔にかかり始めた雨は次第に強くなる。

「ちっ」

グッ―

「え…」

ワタルがあたしの手首をとって、走り出す。

周囲もみんな、小走りなのに。

あたしの目にはワタルだけがスローモーションで見えた。

だってこんなこと、初めてだもん。


「はぁ…はぁ…」

息を切らして、アパートに着いた。

まだ雨は本降りで、雷がどこかに落ちたようだった。


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