lovable winp
当時から周りより背が高かったのもあってか、体格の差で勝ち目が無いって思うらしく。
たいてい意地悪してたヤツらは俺が来たらそそくさと逃げていった。
だったら意地悪しなきゃいいのに……。
なんて思いながら、そいつらの背中を睨んでいた俺に、
「ありがとう。彩くん」
さっきまで意地悪されて半ベソだった女の子が、涙の残る目でこちらを見上げながらお礼を言う。
俺はこの子が泣いてるのを見るのが嫌だった。
だから、
「砂山くらい俺が作り直してやる」
そいつの……相菜の涙を袖でガシガシと拭いてやる。
そしたら、
「じゃあ一緒に作ろう」
「相菜は俺の手伝いな」
「うんっ」
俺が袖で拭き終わった時、相菜は絶対ににっこりと笑うから。
それが見たくて、俺はいつも相菜の涙を拭いてやっていた。