lovable winp
夢の中の相菜は昔から幾度となく見てきた笑顔を浮かべていた。
そんな映像が寝起きのボンヤリした頭の中を占めている。
あの頃は相菜を笑わせるのなんて簡単だったのに……。
俺が命令した通りに書き写したノートを持って、昼休みの踊り場にやってきた相菜の表情はいつも通りの俯き加減だった。
「持ってくるのがおせぇんだよ」
「……ごめんなさい」
今ではあの頃のいじめっ子と変わらないことをしてる自分が居る。
その証拠に相菜の下がった眉があの頃と同じで、自分がそうさせてんのかと思うとどうしようもなく俺を苛立たせた。
矛盾だらけだって、自分でも思うけど……どうして良いのかわからない。
「もう良いからどっか行けよ」
だから、吐き捨てるように冷たく突き放す。
……これ以上相菜のあの表情を見てると八つ当たりしてしまいそうだったから。