さわってみる?
やがて彼は、長い溜め息とともに、手をひたいにやった。

「参った。参りましたよ、いいんちょ。もう持ってきません」

「そ、そう。それならよし」

本当にさわられたらどうしようかと思っただけに、彼の微妙な腰抜けさに、私も安心した。

これから先、困ったらこの手でいじめてやろうかと思ったけれど……

廊下の向こうで、さっきの男子諸君が様子をうかがっているのを発見してしまった。

ダメだ。もうこの手は使えない。

ううん。使いたくない。
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