【完】『いつか、きっと』
度々ブラウンと愛は会釈や挨拶を交わすようになり、

「今度みなさんで、ティーパーティーに来ませんか?」

と、何人か親しい母親たちに声をかけた。

しかし。

「行けたら行きます」

というばかりで、なかなか色好い返事がない。

が。

「私は大丈夫ですよ。一応アメリカ帰りで少しは英語できますから」

そんな言い方で、愛はエマと翔一郎に声をかけ、参加することにしたのである。



当日。

帰宅の時間を見計らって保育所までエマと翔一郎が来ると、

「エマちゃん早いねー。センセまで…わざわざすいません」

愛は頭を下げた。

「まぁ昔からの付き合いやから、気にせんでもよろしがな」

見ると翔一郎は紬の羽織袴である。

「イギリス式のティーパーティーって勝手が分からんから、取り敢えず羽織袴にしといた」

これなら民族衣装やし一応フォーマルやで、と言うと翔一郎は袖口をつまんだ。

「…センセらしい」

愛は小さくクスクス笑った。

まだ袖口をつまんだままの翔一郎は、

「ハァコリャコリャ、奴さんどちら行く、サテお供はつらいね」

とカッポレの仕草で、クルッと軽く身を翻した。

どこで身に付けたのか分からないが、

「うちの爺さんが芸事好きで、ようこんなんばっかりやっとった」

という由であったらしい。

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