恋箱。


薄暗くなりかけの狭い山道を車はずんずん進んでいく。




奈々さんの手をぎゅっと握った。

心臓が壊れてしまいそうで……毎日一緒にいた頃は当たり前だったのに。今はケンに逢えるって思うだけででダメになっちゃいそう。




少しした所で車が静かに止まる。




5メートルぐらい離れた場所に一軒の民家。






「あそこだよ」


アキラさんの声が聞こえた。





本当に??




家には電気がついていた。


だけど……アタシにはチャイムを押す事は許されない。もしケンの親がこんなトコまで来たなんて知ったらますます一緒にいられなくなるに違いないから。





さらに家の周りを観察していると……。





「あっ……!!」





涙を堪えるので必死だった。


そこにたたずんでいたのはケン愛用の自転車。いつも二人乗りしてたあの自転車がそこにあった。




ケンはこの家の中に本当にいるんだ。




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