恋箱。




アキラさんの運転する車は道が幸い空いていたのもあってすいすい進む。


車窓の風景はどんどん見慣れた景色に変わっていった。



さっきまで四方が山だったのに今はビルしか見えない。無機質な街……でもここがアタシの生活の場だ。


奈々さんを先に送ってもらいアキラさんと二人きりになる。




「今日は本当にありがとうございました」


「別に気にしなくていいよ~」


なんていい人なんだろう。





そう



思ってたのに。






車は葵の家とちょっとはずれた方向に走り始めた。この場所はよく知ってる。






ラブホ街。








アキラさんは黙ってその中の一つに車を入れた。



「いい?」




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