恋箱。
「ねぇケン!一人暮らしするよ!!」
アタシは毎月ケンに手紙を書いてた。
手紙の最初にこう書けたのは16歳の秋になった頃。
届くはずのない手紙。
届け場所もわからない手紙。
それを、二人が付き合った記念日に毎月綴ってた。
ケンが迎えに来た時にまとめて渡そうと思って封筒に入れて大切にしまってる。
住所も電話も教えられてないなんてホント困るし不安だけど……あれだけ向こうの親に嫌われてちゃしょうがないんだよね?
実際ケンが引っ越す前の電話番号へ何度か電話したコトもある。
おばあちゃんはその家に残ってたから、葵だってバレないように声色を変えて友達のフリしたりして。
なんとか聞き出そうとしたけど緘口令はおばあちゃんまで完璧で絶対に教えてくれなかった。
今日の手紙はねっ。そう!とうとうお金が貯まったんだ!!
お店から一駅のトコにあるワンルームマンション。
親は本気だって思ってなかったみたいだけど約束だからと渋々了解してくれた。
コンビニも……惜しまれたけど辞めた。
とりあえず貯金をしよう!!!
2人で暮らして行く為に!!
それまでは風俗嬢かもしれないけど、ケンの為に、二人の為にお金貯めるからね。
確かに、このトキ世界がバラ色に見えたんだ。
もう二人の距離を誰にも引き裂かせたりなんかしない!!