恋箱。



とぼとぼネオン街をさまよいながら、ふっと奈々さんの事を思い出した。


いろんな裏切りがあってから自分から人に電話をかけるなんて無かったんだけど。






今日だけは……奈々さんの優しい声が恋しくなって電話した。



「もしもし?あやですけど。分かります??」



奈々さんはすぐに分かってくれて。



「あの……今レゾンのそばにいるんですけど、今からどこか飲みにいきません??」




アタシには珍しく勢いで唐突に誘ってしまった。



奈々さんはアタシの口調から何かを察したのか



「じゃあ準備して行くね♪」


そう快くOKしてくれて……アタシは待合せのコンビニの前でただボケっとしてた。



アタシ……これからどうしたいんだろ?


一人暮らしを夢見た頃はただ毎日が楽しかったはずなのに今はこんなに汚れてしまった。


……ケンとの未来もぼやけて見える。



ひょっとして。



あれは夢だったのかな?



愛されてたコト全部、幻だったのかな?



そう、思うぐらい……今はケンが遠いよ。




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