Bitter Sweet
「で、今日はどこに行くつもりなの?」

尋ねると、昂くんは悪戯っぽい笑顔をして答えた。

「着くまでのお楽しみ!」

どうやら、教えてくれる気はないらしい。

しょうがないなぁ、と思いながら窓の外に目をやる。


すると、駅へ向かう道に…高梨を見つけてしまった。

しかも、女の子連れ。


……。


思わずパッと視線を昂くん側に戻した。


「?、どうかした?」

突然視線が自分に向いて驚いたんだろう。
昂くんが訝しむのもムリはない。


「ううん、その…昂くんの運転姿って新鮮だなって。」

慌てて誤魔化しはしたけど、嘘でもない。

「あ~、そうだろな。俺もお前が助手席にいるの新鮮。」

ふふっと笑いあって前を見つめる。

その心の中では、

ーあんなに人に揺さぶりかけといて、
もう他の女とデートですか。

という、怒りに似た感情も湧き上がっていたけれど。


すぐに打ち消した。

そんなこと、私が思う資格ないし。

今日は、昂くんと久しぶりのデートを楽しむんだから。

…楽しむ目的でいいのか、よく分からないけど。

自分の気持ちを見極めるためにも
出来るだけ、真っさらな心でいたい。

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