Bitter Sweet
中に入り、昂くんはまっすぐ二階の自分の部屋へ進んで行く。

昂くんちの匂い…変わらない。

少しだけ、家の様子を眺めながら昂くんの後ろについて歩いた。


部屋に入ると、
昔よりいくらか整理されて、きれいに片付けられている。

相変わらず本はいっぱい並んでるけど。

生活感はない。

「実家出て長いの?」

率直な疑問をぶつけた。

「あぁ。就職して少し経ってからだけど…6、7年位にはなるな。」

昂くんは何か探し物をしているのか、机の引き出しを開けては閉めて、中身を確認しながら答えた。

「そっか。私は5年位だけど…、月イチくらいは実家帰ってるよ。」

親も顔見せないと淋しがるから。

「俺は季節に一回くらいかな。帰るとすんごい飯喰わされる。」

あは、そうだよね、と相槌を打ちながら本棚を眺めていると。

ー卒業アルバムを見つけた。

「コレ、見てもいい?」

昂くんに確認すると、

こちらを振り返り、少し嫌そうな顔をしながら、

「見たことなかったっけ?」

と、アルバムを一応引っ張り出してくれた。

「卒業した後、一回は見たかも。」

床に座りながら、パラパラとページを開け、昂くんのクラスを探す。

えーっと、確か…E組。

あ、あった。

集合写真の中から昂くんを見つけた。


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