Bitter Sweet
ーそして、20分待ったけど。

高梨は帰ってこないし、連絡もしてこない。

今日はムリかな。
出足挫かれちゃったな…。
帰ろう。

買ってきたものが入ったレジ袋をドアノブにかけ、バッグからメモ用紙とペンを取り出す。

『またね 』

そう書いた後に、桃の絵を書き加えた。桃瀬の、"桃"マーク。
高梨なら分かるはず。

このメモをレジ袋の中に入れてから、階段に向かう。

すると、アパートの前に人影が見えたので、足音が響きすぎないようにそーっと階段を降りて行った。

話し声も聴こえてくるから、1人じゃない。

階段を降り切って、下に向けていた視線を前に戻すと、
若い男女が抱き合ってる姿が目に入った。

街灯の明かりの下、見覚えのある茶色がかったあの頭は。

…高梨、だった。

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