Bitter Sweet
私がお店に着いて10分後。

昂くんがやってきた。

「悪い、待たせて。峰さんしつこくて。捲くのに苦労したよ。」

苦笑いを浮かべながら溜息を吐く昂くんを見て、私は先ほどのやりとりを思い出し、「やっぱりね」と笑いながら相槌を打った。


「さて。一杯飲んでから行くか?」

「もちろん!」

クリスマスだし、ライブ前のウキウキ感で飲みたい気分マックスだった。

昂くんは、シャンパンを頼んでくれて、店員さんがグラスに注ぐのをじっと眺めた。

綺麗な薄い琥珀色の液体から小さな気泡がいっぱい浮かび上がる。

「「メリークリスマス。」」

2人の言葉が同時に重なり、グラスをカチンと合わせた。


一口含むと、爽やかな香りが鼻から抜けて行く。


本来なら、幸せを噛み締められる瞬間、だけど。

今晩、昂くんとのケジメをつけることを想うと、胃の奥がジリジリ痛む。


「適当にツマミ頼んどくぞ。」

昂くんはそう言って、メニューを片手に店員さんに三品ほど注文した。

私の好みのものばかり。

まぁ、昂くんと食の好みは似てるんだけど、ね。


そんなことが無性に、鼻の奥をツンとさせたけれど。

そんなことは胸の奥にしまい、
笑顔を作って昂くんと、
「今日は何唄ってくれるかな」と曲予想を楽しんだ。
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