Bitter Sweet
「コラ。隠すなよ。」

背けた顔を両手で挟まれてムリヤリ元の方角へ戻される。

「キスされなかった?」

「されてないよ。」

…したけど。

「それ以上のことは?」

「ないよ。」

昂くんは私の気持ちを大事にしてくれる人だから。

「ふーん。なんかそれはそれでオトナの余裕があって腹立つなぁ。」

高梨は不貞腐れたように頭の下に両手を組んでバフっと枕に沈む。

「高梨、言ってたもんね。昂くんと付き合えばいいみたいなこと。昂くんのこと認めてるんでしょ?」

高梨の顔を覗きこむように、今度は私が上半身を起こした。

「…オレが認めるとかそこまでおこがましくないよ。年齢的には先輩だから。」

口を少し尖らせてはいるけれど、尊敬してる、に近いのかもしれない。

「オレ、あんなこと言っといてさ。全然諦めらんなかった。ひかりさんのこと。」

トクン、と胸が高鳴るのを感じる。
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