Bitter Sweet
「前、オレんチ来た時にさ。帰り際に、ひかりさん泣いただろ?…あの涙に賭けてみたくなった。」

自嘲的な笑みを浮かべながら高梨は続ける。

「全く自信はなかったけど、半ばヤケだよな。昨夜プレゼント届けに行った時、ひかりさん、いなかっただろ?もし待ってる間に有田さんと帰ってきたら、もう強引に連れ去ろうかな、とか考えてたんだぜ?」

ニヤリと口元を歪めるけど、きっとそれは余裕がなかった自分に対してなのだろう。


「蓮…。」

高梨の強い想いが胸の奥を締め付けてくる。


「とはいえ、待つのは12時までって決めたんだ。ただでさえカッコ悪いことしてんのに…ひかりさんの重荷になりたくねぇし。」

ふう、と溜息を吐きながら高梨は肘枕をして私に向き直る。
そして、私の髪を指先に絡ませながら目を細めた。

「でも、オレと一緒にこれからの時間を刻んで欲しかったから。…ひかりさんがオレの考えてた事に気づいて駆けつけてくれて、すっげえ嬉しかった…。」


ギュッと私の腰に腕を回してきて、私が高梨を抱き締めてるような体勢になった。

応えるように、私は高梨をそのまま包み込む。

「諦めかけてたから…ひかりさんが来たのが分かって夢かと思ったよ。」


ー愛しい。

心の中で、きゅん、と音を立ててるのが解った。


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