Bitter Sweet
「…しっかし、こんな形で再会するとは、な。驚いたよな。」
昂くんが切り出す。

「…うん。…あ、はい。」
うっかり昔のような喋り方になりそうだったけど、一応先輩なので敬語に戻した。

すると、昂くんはフッと柔らかく微笑んで、
「いいよ。社外では敬語じゃなくて。今はプライベートみたいなもんだし。お互いやり易い方がいいだろ。」
と、言ってくれた。

「…ありがとう。」
自然と微笑み返す。

「…なぁ、ひかり。」

「っ、え?」
名前を呼ばれた途端、ビクっと肩が跳ねてしまった、気がする。
名前呼ばれた位でドキッとするなんて。
しっかりしろ、私!

「始めのうちは、会社でやりづらい部分、お互いきっとあるだろうけど…よろしくな。早く慣れるように俺も頑張るからさ。」
少し困ったように眉が下がり、人差し指で頬を掻く。

…相変わらずマジメというか、律義というか。
そもそも、わざわざランチに誘ってまで話す場を設けるなんて。
変わってない所を確認し、ふふっ、と笑みが浮かんでしまう。

「ううん、こっちこそ。昔は昔、今は今、だもんね。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を軽く下げる。

昂くんを見ると、ホッとした顔で、優しく微笑んでいる。

「…変わってないな。その基本的にはサバけた性格。」
目尻を下げて、ハハッと笑う。
「…基本的にはってどーゆう…」
言いかけた所で、料理が運ばれてきた。

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