Bitter Sweet
運ばれてきた料理を口に入れながら会話を続ける。

「基本的にはってどーゆうイミですか?!」
裏を含んだような言い方が気になってつい問い詰めるような口調になる。

「…また敬語になってる。ま、いいけど。」
クスっと笑って先を続ける。
「悪い、つい。ホントは甘えたなトコあるの、知ってるから、さ。」
ちょっと罰が悪そうな顔をして謝る昂くん。

そんな図星を突かれた私は、グッと言葉に詰まる。

な、何それ!

恥ずかしくなって顔が急激に火照る。

「…そんなこと、普通の付き合いしてる人は知らないよ…!会社で変なことバラさないでよね!?」
たしなめるように軽く睨みつけると、
分かってるよ、ごめん、とクスクス笑ってハンバーグを口に入れていく。

ホントに反省してるのか、と疑いの目を向けるが、
大丈夫だって、と優しい瞳で訴えてきたので、信じるしかない。


その後は、会社入ってから何年だ、とか、なんで転職したか、とか。
社内の人間の関係性とか、人となりとか。
そういった情報を交換してランチタイムは解散した。


今度は飲みにでも行こうな、と
ポン、と頭に手を置かれながら言われ、
そのポン、に胸がざわついた事には気付かないフリをして。



…10年も前のことなんだから。
色々時効でしょう??
何も気にする事はない。
ただの先輩と後輩。

それでいいんだから。
踏み込まなければ大丈夫。

言い聞かせるように、
大丈夫、大丈夫、と心の中で何度も唱えた。
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