Bitter Sweet
俺はきっと、心のどこかで分かっていた。

ひかりは俺との未来は選ばないって。


いつも前を向いてるやつだったから。



そして、その予想は見事に的中。


イヴの夜、俺は振られた。

別れ際に、サヨナラのキスをされて。



ー再会してから、俺は一度も、
ひかりに触れられなかった。

手を繋いだだけ。


本当は腕の中に閉じ込めて、抱き寄せて。

彼女の温もりを感じたかった。


でも、ひかりの気持ちを考えたら強引なことも出来なくて。

ーーそれに。
一度触れてしまったら、もう止まらないんじゃないかと思っていた。


…ただの、情けない男だ。


それでも最後の最後に、ひかりを抱きしめた。


懐かしい、ひかりの匂い。
香水はあまり付けない彼女の…。

コレが最後だと思うと、
鼻の奥がツンとする。

ひかりの柔らかい唇の感触はほんの一瞬で、

スルリと俺から離れたひかりの苦しげに微笑む、そんな表情を見たら。

もう、何も言えなかった。




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