Bitter Sweet
会社を出るなり、私は高梨に突っかかる。

「…で?何なのよ、急に。手伝いとか言って。なんか芸でもやるつもり?」
少し早足で歩く高梨の後を追いかけながら聞くと、急にヤツが足を止めたので背中にドン、と顔をぶつけた。

「…痛ったぁ!急に止まんないでよ、もう!」
「あ、ごめん。」
振り返り、私の顔を確認すると、
プッと笑った。
「…何。」
ムッとしながらぶつけたオデコと鼻のあたりをさする。
「…いや、うっすら赤くなってるし、前髪張り付いてるから、つい。」
誰のせいよ!と一喝しそうなトコロをなんとか堪える。

「…もー、いいわ。で?手伝いって?」
「あー、うん。盛り上げにチョット手品でもしようかとは思ってるけど…。」
ガサゴソと、手に持っていた紙袋の中を掻き回し、私に、ほら、と仕掛けに使うらしいグッズを見せてくれる。
「…手品なんて…やってたね、そーいえば前も。」
新人で入ってきた頃に歓迎会で披露していたのを思い出す。
「じゃあ、何?グッズが足りないとか?会場に何か仕掛けするとか?」
私が手伝えそうな事を言ってみる。
けど、高梨は首を横に振る。
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