Bitter Sweet
「あ、信号変わりそう、行こうよ。」
急にグイッと手首を掴まれたのでバランスを崩しそうになり、わっ、と小さく声をあげたけど、そんなのお構いなしな高梨に引っ張られる形で横断歩道を急いで渡る。

渡り終わった後も、そのまま高梨は私の手首を掴んだまま、ズンズン歩く。
早足な上、引っ張られていたのでさすがに息が切れそうになって、高梨に待ったをかけた。

「た、高梨!待ってって。早いよ…!」
ようやく歩を緩めてくれたので、
ハァ、と息を整えた。

「…ごめん。」
そう言って、ハッと気付いたのか手首もパッと離す。

「…どうしたの?」
なんだか様子がいつもと違う気がして、そう聞いてみた。

「…手伝って欲しいことなんか、ないよ。」
ぶっきらぼうに言う高梨。


…は?

あぁ、さっきの質問の答えか。

て、いうか。

ない、だと?

「何それ…。」

ガクーッとうなだれる。

「だって、今週全然あの飲み屋来なかったじゃん、ひかりさん。仕事は落ち着いてそーだったし、なんでかなと、理由を問いただしてやろうかと。」
偉そうだけど、ちょっと拗ねたような口ぶりだった。

いや、これ拗ねてるよね?

なんか可愛い?

プッ、と堪え切れずに吹き出してしまった。



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