Bitter Sweet
「…ん~。」
カーテンの隙間から射し込む朝の光が眩しいのか、
高梨がモゾモゾと動き出す。

重そうな瞼をなんとか開けて、こちらを見ると、

「…はよ。」
掠れた声で呟き、
ふわぁ、とアクビをしながら伸びをして、上半身だけ身体を起こしてきた。

あまりの衝撃でさっきは飛び起きたけれど、
まだ下着姿だったのを思い出し、慌ててもう一度布団に潜る。

「おはよう…ございます。」

この場にいるいたたまれなさから、思わず敬語。

すると、ププっと笑われる。

「何それ、なんで敬語?」

「いや、だって…なんか。どーゆう状況かサッパリわかんないし…。」

あぁ、情けない。

ヤケ酒した挙句、男の部屋でこんな姿で目を覚ますって。

よく聞く話だけど、覚えてないなんてあるわけないじゃん、と思ってた。


でも、全くホントに覚えてない。

「あ~、やっぱり覚えてないんだ。昨夜はあんなに…。」
「わーっ!!」
恥ずかしくなって高梨の言葉を叫んで遮る。

すると高梨はハハハッ、と大受けして、

「可愛いとこ見せてもらっちゃったかも、色々!」
クックック、と笑いながら私の頭に手を伸ばす。

髪を優しく梳きながら、

「オレ、向こうで着替えるからゆっくり準備していいよ。まぁ、そのカッコでうろついても、オレはいーけどね?」
ニヤッと口角を上げて笑みを浮かべている。

カァーっと、顔から火が出そうになりながら、

「ムリに決まってんでしょ!さっさと向こう行ってよ!」
手元にあったクッションをギューっと高梨の顔に押し付ける。

「ひっで~、オレん家なのに。」
ブツブツ言いながら、足下にあったらしい、シャツを着てベッドから立ち上がる。

…あ、ズボンは履いてたんだ。

なんか、セーフかも!?

急に安心してきた。




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