Bitter Sweet
「うまそー!!すき焼きなんて実家でしか食わないから、嬉しいなー!」

ご馳走を前にした子供みたいにはしゃぐ。

「やっぱり?なかなか一人だとやれないよね。さ、ちょっと早いけど食べよ!」

グラスにビールをつぎ、カチン、と乾杯する。

美味い美味い、とすき焼きを平らげてくれたので、お酒の肴になりそうなものだけテーブルに出し、軽く片付ける。

ほろ酔いで、2人とも上機嫌だった。

「あ、そーだ、プリン食べよ?」

冷蔵庫から差入れでもらったプリンを持ってくる。

プリンのカップのフタを開けたところで、高梨が切り出した。

「ひかりさん、さ。…昨日どうしたの?あんなになるまで飲むなんて珍しいんじゃない?」

「…っ、まぁ、ね。私だってそんな時もあるよ。」

どうしよう。高梨の真っ直ぐな視線に目を合わせられない。

はぐらかしてみたけど、高梨が追撃してくるのを雰囲気で感じていた。

プリンを一口、口にいれると、甘さがじんわりと広がって、美味し…と呟いてしまう。

「はぐらかすなよ。オレは聞く権利、あると思うけど。」

高梨は真剣な眼差しを向けてくる。

でも、どう話したらいいのか。
私だって、昨日感じた胸の痛みの正体は把握してないのに。


「…ん。何て話せばいいのか、わかんなくて。」
「いいよ、話せるとこからで。」

妙に大人に見える。
こんな落ち着いた感じ、出せるんだこいつ。

いつもと違って生意気さを、感じない。





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