Bitter Sweet
ポツリ、ポツリと私は話し始めた。

昂くんとのこと。


流石に高梨も驚いていた。

「なるほど。有田さんと何かあるような気はしてたけど。それで今週はなんかヘンだったんだ。」

納得した様子で私をマジマジと見る。

「…ヘン、だった?ていうか、カン良すぎじゃない!?」
なんで分かるの!
そんな態度に出してたつもりないのに。

「他の人は気付いてないんじゃない。オレから見たら、心ここにあらず、って感じだった。」

よく気づいたな、といささか感心してしまう。

その一方で、高梨が拗ねていたのを思い出した。

いつもの飲み屋に行かなかったの
は、高梨ともちょっと距離を置こうと思ったのもあったからだった。

男として見られるにはどうしたらいいか試したい、なんて挑戦的なこと言われて多少なりとも、意識しちゃったからだ。

でもそれは、ここでは伏せとく。

「まぁ、そりゃ、動揺するでしょ?で、友達と飲みに行ったりしてたから、いつもの店には行けなかったんだけどね。」

「ふ~ん。それだけ?」
「それだけ、よ?」
なんだか自分の気持ちを見透かされてるようで、落ち着かない。

「有田さんかー。やるじゃん、ひかりさん。」
「…何がよぉ。」
「だって、あの人、男から見ても…って、やーめた。男誉めてもしょうがないや。」
グビッとハイボールを飲み込む。

…へぇ…。高梨から見てもいい男、なんだ。
自然と微笑んでしまった自分に気付かず、高梨が口を尖らせる。

「何、その嬉しそうな顔。元カレの評価高いとそんな嬉しいわけ?」

「えっ、そんな顔したつもりないけど!」
驚いて高梨の顔を見つめる。

「してました。何だよ、まだ未練あったりすんの?
そーいや、彼女いるとかいう話出てた、っけ…。」

聞かれるなり、私は高梨から視線を外す。
いきなり、核心をつくような質問してきたから。
どうしたらいいか、わからない。
自分の気持ちも。



未練?

ううん、未練なんてなかった。

なのに、今彼女がいるなんて当たり前の話をマトモに聞けないなんて。

< 48 / 263 >

この作品をシェア

pagetop