Bitter Sweet
空が白んで来る頃、ふと眼が覚めた。


背中には、温かい肌を感じる。
高梨が私を後ろから包み込むようにして抱き寄せて寝ていた。


胸がチクリ、と痛む。


普通のカップルなら、幸せの情景。


でも、私達はそんな関係じゃない。

お互い、狡く、温もりを利用した…。
だから、こんなに後ろめたい。


高梨が昨夜吐いたセリフは、本心なのか。

それとも、ただ、衝動的に、だったのか。

どちらも、だったのかもしれないけれど。


ただ、言えるのは。
高梨は一晩中、優しかった。

声をこらえて泣く私をキツく抱きしめてくれてた。


どうして、こんなに甘えさせてくれるの?


高梨の方に向きを変えようと寝返りを打つと、目を細めて私を見てる高梨の顔が眼前にあった。

「…起きてたの?」

「ん~、ちょっと前にうっすら。」

「そう…。」

それ以上、何を話したらいいか分からなくて、ついじっと高梨を見つめてしまった。

「そんなに見つめるなよ、照れるじゃん。」

照れ隠しか、私の鼻をブニッと摘まんで言った。

「いたい~…。」

クスクス笑って、摘まむのをやめてくれる。


「まだ、考えてんの?有田さんのこと。」

「…今は、考えてなかったよ。」

「そ、いい傾向。」

安心したかのように、私の頭を優しく撫でる。

「あ~、痺れた。ちょっといい?」

腕枕をしてくれてた方の腕が限界に達したらしく、私の頭の下から腕を外す。

「…ごめん、良かったのに。」

急に色々申し訳なく思えてとっさに謝ってしまう。

すると、ため息を吐いて、
今度は正面から私を抱き寄せる。

「なんであやまんの。全部、オレのせいにしていいって言ったでしょ。」
「…でも。」
「オレがそうしたかったから、したの。腕枕も。今も。」

言いようのない感情が、私を襲う。




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