Bitter Sweet
「おー、いいニオイ!」

シャワーを浴び終わって、出てきた高梨が嬉しそうに言う。

「昨日も思ったけど、ひかりさんて意外と家庭的だよね。」

料理のことを言ってるんだろう。

「意外と、は余計ですー。」

一人暮らし歴も長くなってきたものだから、一通りは出来るだけだ。

「褒めてんだって。美味しいよ、このオムライス。」

「あっ!つまみ食いしないでよね~!」

いつの間にか一口食べてる高梨からお皿ごと取り上げる。

「えー、いーじゃん。いただきまーす!」

私から素早くお皿を奪い取り、パクパク食べる。


なんか、かわいい。

プッと吹き出してしまう。


「何、笑ってんの。」
目を丸くして問いかけてくる。

「ううん、何でもない。」

私を全て包み込んでくれるかのような力強さを持ちながら、
こんな子供みたいな一面もある。

不思議な奴。


「…ねぇ、高梨。」
「ん?」
「昂くんとの話は、ナイショね。会社の人には絶対話さないって思ってたことだから。」
「…あぁ。」
「もちろん、あんたとの事もね。」

社内での人間関係は、バレればすぐ噂になる。

高梨の取り巻きの槍玉にあげられたくはない。

「2人だけの秘密ってことだ。」

「…そーゆうことだね。」

秘密、という言葉にドキリ、とする。

悪いことをしてるみたいで。

「りょーかい。」

片手を挙げて、返事をくれる。

高梨が言いふらしたりするわけない。
そんな事分かってるけど。



昂くんに知られるかもしれないのも、なんかイヤで。

秘密協定を、結んだ。

どこまでも、…ズルい。




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