Bitter Sweet
「よーし、今日は飲むぞ!いわば打ち上げだな!」
生ビールのジョッキを片手に張り切る峰さんに、私は労いの声をかける。

「本当にお疲れさまでした!」

「桃瀬も急に、大変だったろ。ありがとな。」
昂くんが、お疲れ、とジョッキをカチンと合わせてくる。


ゆっくり飲みに来るのは久しぶりだ。
昨夜はすぐに帰ったし。

明日も一件だけ仕事はある、が。
朝10時からなので、今晩は多少のんびりできる。

そう思うと、緊張感も薄れた。
しかも、今いるのは神戸。解放感に拍車をかけている。


とりあえず、昂くんともフツーに接してるし、そんな肩肘張ることもないよね。


少し安心して職場の飲み会とは違う、普段のペースで飲み始めた。

それはどうやら峰さんも同じだったようで。

二時間後には、

彼は先に酔いつぶれてしまった。

「ちょっと~、峰さん!?起きて下さいよー!まだ9時ですよー!?」
肩をゆさゆさと揺り動かすけど、
ビクともしない。

「ダメだな。こーなると全然起きないよ。」
昂くんはため息を吐き、もうやめときな、と私の動作を抑える。

入社してから一ヶ月も経ってないのに、こーゆう峰さんには慣れてるようだった。

「どーする?連れて帰る?」
と聞くと、
「俺たちが帰るまでこのままでいーんじゃない。個室だから転がしておけるし。」
冷静な対応。

確かにここは、掘りごたつ式のテーブル席で個室になっていて、
1人くらい身体を倒してても大丈夫なスペースはあった。


「そっか。まぁ、まだ飲みたかったから、いいならいいんだ。」

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