Bitter Sweet
「そうだよな。せっかく美味いもの食ってるのに、もう帰るのもな。」
ハハッと目尻を下げて笑うその姿。

デジャヴを感じる。


昔も、一緒にいたくて、帰るのがもったいなくて、ファミレスでお腹いっぱいになるまで、ドリンクバーで粘ってた。


今はジュースじゃなくて、お酒だけど。
峰さんには悪いけど、まだ帰るには早くて、
もう少し、ここにいたかった。


昂くんと2人きり、に近い状態にはなっちゃったけれど。


ホロ酔い状態にはなっていたから、気は緩んでいた。


「昂くん、すっかり会社慣れたみたいだね。峰さんの扱いもうまいし。」
向かい合って座っている昂くんは、ん~、と首を傾げながら、
「そうかな。まだまだだよ。
峰さんのことはともかく。」
笑いながら答える。


「そーいや峰さんがさ、こないだ街コン行ってみたんだって。試しに。」
「へ~!面白そう!どうだったって?」
思わず身を乗り出して聞いてしまう。
「うん、そしたらさ、初恋の女の子が来てたらしくって。」
「うんうん。」
あれ?
どこかで似たような話をつい最近、聞いてるよね、これ。

どこかって、ここだよね。

昂くんをチラッと見る。

「でも、その人、原型が分からない位、その…ふくよかになっちゃってて、可愛らしさは残ってはいたけど、やっぱりショックだったんだって。」

…確かに、それは。
峰さんの気持ちも分かる。

私だって、昂くんが、
すっごい太っちゃってたりしてたら。
再会した時のショックはでかかったはずだ。


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