Bitter Sweet
「ほ、ホントホント!人に作ってもらうなんてなかなかナイから、有難い!」

焦ってるの、バレたかな。妙にドギマギしてしまった。
高梨を見ると、一応満足したのか、元の位置に体を戻している。

「よろしい。じゃ、改めてお疲れー!」

高梨は全く気にした様子もなく
カチン、とワイングラスを合わせた。

早速、高梨の作った料理にも手をつける。

「ん、おいしーよ、高梨!あんたって苦手なこととか、出来ないこととか、ないの?」

「へ?そりゃ、ないわけじゃないよ。」

「例えば?」

「うーん?それは秘密でしょ。言ったら絶対ひかりさん嫌がらせしそうだし。」

意地悪そうな笑みを浮かべて、
絶対言わないよ、という顔だ。

「何よー、白状しなさいよ~。」

「ダーメ。」

知らん顔でピザを頬張り始める。

「じゃあさ、ひとつだけ教えてよ。」

「イヤです。」

取りつく島もない。
弱味のひとつくらい、握ってやろうかという企みはムダなようだ。

渋々、サラダに手をつける。

「ひかりさんが、教えてくれるなら、一個位教えてもいいよ。」

探るような眼で私を見てくる。

「私の?苦手なこと?いっぱいあるけど。」

そんなこと聞いてもしょうがないんじゃ。
そう思って高梨を見ると、奴はふっと目を逸らしてワイングラスに口をつけた。

「出張で、何があったか。話してよ、ひかりさん。」

今度は真っ直ぐ、私を見つめてくる。その視線に耐えられず、思わず俯いてしまったけれど、

「…何もないよ?」

努めて明るく答えた。

でも、高梨の追撃は止まない。

「嘘だって、顔に書いてあるよ?」
自分の頬を指でツンツン突ついて見せてくるので、

「そんなわけないでしょ?」
と答えたものの、
今朝のヒドイ顔を思い出し、思わず両手で自分の顔を包んだ。


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