Bitter Sweet
「なんで、何かあったって決めつけてるの?」

本当は聞いて欲しいって思ってたくせに、
話せと言われると無性に抵抗したくなる。

「何もなかったなら、そう、オレの目見て言ってよ。」

「なかったよ!」
キッと睨むように高梨を見る。

「…なんで怒ってんの。つーか、隠してんの丸わかり。だってさ。」

箸をおき、その手を私の頬にそっと添わせる。

「今日ずっと、泣きそうな顔ばっかしてた。」

心情を言い当てられて顔が火照ってくるのが分かった。

「…そんなことないって。高梨だけだよ、そんなこと言うの。」

高梨の手をそっと自分の頬から外そうとするけど、そうした瞬間、
手首を絡めとられソファに押し倒された。

「ち、ちょっと…、離してよ…。」

見下ろしてくる高梨の考えが読めなくて、胸の鼓動が一気に早まる。

ただ、ギュッと力強く握られた手首が少し、痛くて。
顔を歪めながら彼を見上げた。

「じゃあ、話して。話さないなら、このままココでシちゃうよ?」

瞳に強い光を宿した高梨の顔が私の顔の真上に迫る。
言われたことの意味をすぐ呑み込めず、
お互いの唇が触れそうになるまで距離を詰められて、やっと私は我に返ったように、

「…っ、は、話すから!」

と声を絞り出した。

と同時に、高梨がピタッと動きを止めて私からゆっくり離れる。

「素直でよろしい。ま、オレとしては今の、続けたかったけど。」

舌をベロッと出して、残念そうな表情を浮かべている。

「何言ってんのよ、もう…!ていうか、殆ど脅しじゃない、今の!」

ドキドキしていた胸を手で押さえながら身体をゆっくり起こした。

「ひかりさん素直じゃないからだよ。さ、心置きなく話して。酒もまだあるからさ。」

高梨はニンマリと口の両端を上げてソファの背もたれに片腕と身体を預ける。



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