Bitter Sweet
私は大きく息を吐き、かいつまんで話し始めた。

飲みに行ったら峰さんが先に潰れて、昂くんと2人で飲んでるようなものだったこと。

彼女の話を思い切って振ってみたら、あんまり話たがらなかったこと。

「…昂くんね、私達が別れた時、なんていうか…後悔?してくれてたみたいで。」

昨晩の出来事が、鮮明に思い出される。

「謝られちゃって。…手放したのは自分なのに、勝手だよなって。」

ポツリポツリと話す私の言葉に、高梨は時折頷きながら耳を傾けている。

「好きなまま、別れちゃったんだなって…今更だけど。」

自分の言葉に心臓がギュッと掴まれたような気がして、思わず胸に手を置いた。

「…すごく好きだったって言われたんだ。あんな…切なそうな昂くん、初めて見た気がして、こっちまで切なくなっちゃった…。」


ワイングラスを持つ手が、ほんの少し震えた。

昂くんに握られた手を思い出して、また切なくなる。

「…有田さんにとっても、ひかりさんは特別なわけね。」

それまで沈黙を守っていた高梨が放った言葉は、私の中にドスンと響いた。


“特別”…。


私にとって昂くんは、

特別な人。

それは自覚してた。

相手にとってもそうだとは、なんでか思い至らなかったけど。


…そうなんだ。


昂くんの中でも、高校生の私は残っていたんだ。











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