Bitter Sweet
私は高梨の腕をそっと外し、布団から出ようと身体を起こした。

すると、高梨の目を覚ましてしまったようで、

「どこ行くの…」

眠たそうに問いかけながらも、私の手首をガッチリと掴んでくる。


「どこ、というか…服、着ようと思って…。」

下着姿でいるのも恥ずかしいし。
恋人でもないのに、同じベッドで寝てじゃれ合えるわけもなく。

「もー少し、このままでいてよ…。ひかりさん、柔らかくて気持ちいーんだよね~。」

グイッと腰を引き寄せられて、あっという間に高梨の腕の中に逆戻り。

「お、いー眺め。」

向かい合わせになっていたキャミソール姿の私の胸元を見て、そんなに大きくない胸にバフっと顔を突っ伏してきた。


突然の行動に驚いて、

「な、何すんのよ!」

と思わず目の前にあった頭を勢い良く、ペン、と叩いてしまった。

「いってぇ~。」
頭をさすりながら、上目遣いで私を見てくる。

「目の前にこんな魅力的なものあったら触りたくなるのが男心だっつーの…。」
ブツブツ言いながら、くるりと私と反対側に寝返りを打ち、完全に背を向けてくる。

…拗ねてる。

こーいうとこ、カワイイんだよねコイツ。

母性本能をくすぐられるとはまさにこの事だな。

昨日から振り回されまくって腹が立ってたりもするのに、こんな子供みたいな姿を見るとそんな気持ちもシュルルル~、と音を立てて萎んでいく。


この気持ちに、名前をつけたら。
何ていうのかな…


ーーううん、今はまだ。


蓋をしとこう。


ただの、癒し系オレサマ男だって。


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