Bitter Sweet

「…ねー、蓮？」

背を向けてる高梨に、やんわりと声をかけた。あえて下の名前で。

すると、ピクッと身体が反応し、ゆっくりこちらを振り返る。

「…何？」
顔には明らかに、戸惑いの表情が浮かんでいた。

「かわいいね、蓮は。」

素直な気持ちだった。

「…男が言われて嬉しいと思う？それ。」

げんなりした目で見つめてくるけど、

「んーん、思わない。」

ニッコリと微笑んで答えた。

「あ、でも。一部嬉しかった。」
高梨は身体を完全にこちらに向き直して言った。

「蓮、て呼ばれたトコ。」

柔らかくて、甘い微笑を浮かべて、私の頬に手を添える。

「…分かってないな、ひかりさんは。」

何が？と、頭に疑問符を浮かべていると、

ちゅ、と額にキスを落とされた。

面食らって目をパチクリさせていると、

「かわいいのはオレじゃないよ？」

ニコッと笑って私のホッペをつまんでくる。

じゃあ誰がかわいいのよ。
…と問うのは愚問な気がした。
聞いた所ではぐらかされるか、
自分が困るだけだろうから。

だって、さすがの私も分かる。

高梨の瞳はまっすぐ、私を見つめていたから。



ーもしかして。

いや、もしかしなくても？

コイツ、私の事…。

まさか…ね。