Bitter Sweet
雑居ビルの六階に位置するバーに入ると、ジャズが流れてくる。

入って正面のガラス窓は大きく、そこからは夜景が広がり、とてもロマンチックな雰囲気のお店だった。


窓際の近くの小さなテーブルに、昂くんの姿を見つける。


「…待った?」

声をかけると、昂くんは私に気付き、
いや?、と言いながら吸っていた煙草を灰皿に押し付けた。


「お疲れさん。急に悪かったな。」

「ううん。…まぁ、ビックリはしたけど。」

言いながら椅子に腰をかけ、ビールを注文する。


「ああいう、ヒミツのやりとりみたいの、やってみたかったんだよな。」

イタズラが見つかった子供のような、少しバツの悪い顔をしながらも楽しそうな笑顔を見せる。

「なーに、…お遊びに付き合わされただけ?」

昂くんの顔をたしなめるような眼つきで覗き込む。

すると、慌てて首を振り、

「それだけじゃないよ!…ほら、そのうち飲みに行こうとは、最初に言ってただろ?こないだは一応、峰さんいたしさ。改めて。」

と、弁解してくれる。

ホント律儀。
そんな口約束、社交辞令で済ましたっていいのに。


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